観たり、聴いたり、思ったり
【読書】「あひる」「星の子」今村夏子著

最近小説をあまり読まなくなっていました。読むのは古典文学ばかりで、現代小説はあんまり読んでいませんでした。

でも今村さんの小説はすんなり読めました。

『あひる』は短編小説集です。
『星の子』は一冊でひとつの小説ですが、どちらも読みやすい。そして、なんとも日常な感じでした。
特に大きな事件があるわけでもなく、ハラハラドキドキしたりするような小説ではありません。
今村夏子さんはすごい経歴の持ち主で、
2010年 太宰治賞
2011年 三島由紀夫賞
2017年 河合隼雄物語賞
2017年 野間文芸新人賞
2019年 芥川賞
という、素晴らしい受賞歴です。
しかし太宰治賞と三島由紀夫賞を取るというのは、太宰と三島の関係を考えると不思議ですね。
三島は太宰が嫌いで本人の前で「私はあなたの文学が嫌いです」と言い放ち、それに対し、太宰は「そう言いながら会いに来るんだから本当は好きなんだ」と言うという、おかしなエピソードがあります。
因みに私は太宰がすごく好きで、高校時代に「太宰のことはあいつに聞け」と言われ、太宰の本名の「津島修治」からあだ名が「津島」「つし」だったほどでした。担当ではなかったのに国語の先生が論文のコピーをくれるほど高校では私の太宰好きは有名でした(今も大事にとってあります)。三島も文章は美しいと思っているし、思想的には共感もします。高校時代からの親友は三島好きです。新婚のとき玄関に三島の写真が飾ってあったのは引きましたが。
大学のとき、一ヶ月入院したときに、ほぼ全部三島は読んだと思います(それしか当時はすることがなかった)。太宰の作品は高校時代に全集も持っていたし、とっくに全部読んでいたので、太宰のほうがやはり好きだったりします。また今読み返したりしています。
今村夏子さんの文章はとても読みやすいです。
「星の子」は新興宗教(?)にはまってしまっている家族の話ですが、でも普通の生活を送り、特に大きな問題にもならず、普通の生活を書いた小説でした。ハラハラドキドキもしない、淡々とした小説。
他にも、今図書館で予約しているので、来たら読みます。
もう、うちに本を置く場がなさそうです。
でも本田安次先生の民俗芸能の全集は元上司からもらうことにしましたよ!
高くて買えなかったからね。捨てるくらいならくださいとお願いしました。
きっとうちは本で寝床がなくなる(笑)
【コンサート】PMFオーケストラ東京公演(2022/8/2 サントリーホール)

小曽根さんの追っかけとして、サントリーホールに行ってきました。

曲目は「オベロン序曲」
そしてプロコフィエフの「ピアノ協奏曲第3番」
ブラームス「交響曲第2番」。
小曽根さんのプロコのピアノ協奏曲3番を聞くのは2度目。
前回も良かったけど今回良かったんじゃないかなぁー。
というかPMFオケをきちんと知らなかったんだけど、やはり若い人たち中心というのはいいよね。
指揮者はラハフ・シャニで、ズービン・メータの後を継いでイスラエル・フィルの音楽監督になった若い指揮者…といっても1989年生まれだから、もはや若手でもないのか。
メータも50年続けたイスラエル・フィルの音楽監督、ラハフ・シャニも続けてほしいし、なんと言ってもイスラエル、テルアビブ出身だから、頑張ってほしい。イスラエル・フィルにはまた日本に来てほしい。
いやしかし小曽根さんですよ。
このところオケとの共演が多いけれど、どんどん良くなっている(って私が言うのはおこがましいけれど)。
今日のプロコはとても良かったですよ。
ちょうど小曽根さんの背中を見るような席だったけど、彼がどんな表情してるかわかる気がしました。
プロコなんてあんな複雑な曲、よく暗譜で弾けるよね。
小曽根さんらしさも残しつつ、でもきちんと弾いてて、素晴らしかった。もしかすると(もしかしなくても)出演者で最年長だったと思うけど、
彼は若い人とやるのが嬉しいのでしょうね。
先日のN響より全然良かったですよ。
小曽根さん、ホントに素晴らしい方だなぁ。
どこかで会えるチャンスがないだろうか。
【読書】平家物語 犬王の巻 古川日出男 著(河出文庫) から「平家物語の世界」へ

 

先日、映画「犬王」は観に行きました。

原作もあるので読んでみようと思いました。

今は映画「犬王」のカバーが上からかかっていて、2枚カバーがかかっています。

映画で、犬王と友魚(ともな)が「(俺たちの)平家」を語るたびに

成仏できない平氏の霊たちが成仏していく・・・というような表現を見て

つまり平家は滅んでいった平氏への鎮魂なのか。と思い、

ちょっと調べたら、『江戸川大学紀要』第三二号に

「『平家物語』における鎮魂の諸相」という論文があって(岡田大助 著)、

『平家物語』の主題については、古来、平家滅亡の悲哀、仏教の無常観等諸説ある。しかし今日、少なくともその主題の一つが鎮魂である点については、ほぼ定説となっている。( 『江戸川大学紀要』第三二号「『平家物語』における鎮魂の諸相」岡田大助 より引用)) 

とあり、やはり「鎮魂」なのか、と。

そのあとNHKの「100分de名著」のテキスト『平家物語』を読み(能楽師 安田登 著)、

『平家物語』と能は、戦いで命を落とした人や、この世に思いを残して死んでいった人の霊を鎮魂するという、共通の役割を持つ芸能でもあります。(NHKテキスト 100分de名著『平家物語』安田登 より引用)

とあって、やっぱり「鎮魂なのか!!」と。

「犬王」の映画を見るまでまったくそういう考えには至りませんでした。

私は能が苦手で(とはいえ結構見ている)、つい避けがちなこともあって、全然知らなかった。

『平家物語』自体は好きで、岩波文庫全4巻で読み、また大学の時のテキストもあり、

仕事で平家語り研究会とかかわるようになって、「覚一本」まで買ってしまうくらいには好きです。

でも、平家語り研究会の演奏会に関わって、薦田先生からお話を聞くまでは、

『平家物語』という本があって、それを琵琶法師が覚えて語っていたのだと思っていました。

が、逆で、琵琶法師が語っていた平家の話をまとめたものが『平家物語』なわけです。

なので、「犬王」みたいに「俺たちの平家」というものが琵琶法師それぞれにあったと思います。 

それを覚一が当道座としてひとつにまとめて、残したのだと思います。

そして江戸時代になって「平家正節(へいけまぶし)」が作られ、伝えてきたのだろうと。

ただ、伝えてきたのが盲僧なので、いろいろと違ったりはしたでしょう。

現在、正当な継承者として残っているのは今井勉師お一人だけですが、

平家語り研究会で若手が薦田先生と一緒に「平家正節」と、現行残っている曲から復刻を試み、

演奏会を年に1回開いている、ということです。

ここで宣伝は滅多にしませんが、9月9日に平家語り研究会の演奏会があります。

カンフェティ https://confetti-web.com/heike-katari/

私はどっぷりはまっておりまして、事務関係ほぼやっております。(経理は苦手なのでお任せして・・・)

大河ドラマも「鎌倉殿の13人」ですが、半分くらいは平家滅亡までの物語だったので、

よく知っている『平家物語』に出てくるお話でした。

NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」公式ホームページ

https://www.nhk.or.jp/kamakura13/

またアニメ『平家物語』も人気です。

映画「犬王」はいろいろ考えさせられるきっかけを作ってくれた映画なので、お勧めしたいです。

アニメ「平家物語」公式ホームページ

https://heike-anime.asmik-ace.co.jp/

映画「犬王」公式ホームページ

https://inuoh-anime.com/

【舞踊会】花形・名作舞踊鑑賞会(2022/7/23 国立劇場小劇場)

本日は国立劇場小劇場に花形・名作舞踊鑑賞会を観に行ってきました。

朝起きたらものすごく暑くて、着物は諦めました。夏にお出かけの時、着物着られるの偉い!私は無理!

一部と二部とあり、総入れ替え別料金でしたが、両方とも行きました。

いやぁ、いろいろ思うところありまして、疑問点もあったので、今度舞踊家さんにうかがってみようと思いました。

「かさね(色彩間苅豆)」は覚えがあって、今調べたところ、2008年に亀治郎(四代目猿之助)・海老蔵で見てます。

あ、なんかこの海老蔵はまぁまぁだった覚えがあります。

でもその時に一緒にやった「加賀見山旧錦絵」の岩藤がひどくて、なんじゃこりゃ、と思ったほうが印象にあって・・・。演舞場でしたね。

今日の「かさね」は、う~ん。なんだか長く感じました。

最近プログラムにいろいろ気になったことは書き込むことにしています。忘れちゃうから。

二部の最後の「棒しばり」はよかったです。面白かったー。

久しぶりに観ましたが、ほんとに面白かった。

演奏者がかなり変更があったのはやはり歌舞伎の影響もあるのかな?

今感染者大爆発ですものね。

しかし日本舞踊はセリフも言えないといけないからね。セリフが下手だと突然すごく下手に見えてしまう。

あと、昔上司が言っていたのだけど、女役を女がやるとあまりにも生々しい。というのが

ちょっとわかりました。

でも日本舞踊面白い。

「勉強しなさい」

とKさんにずっと言われていて、去年あたりから日本舞踊のお勉強をしているのですが、

今日はなんと後ろの席がそのKさんで、「よしよし」と褒められました。

もっと日本舞踊の勉強しますよ。

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女流義太夫演奏会7月公演−五代目松本幸四郎―(2022/7/16 国立演芸場)
本日は女流義太夫演奏会7月公演。国立演芸場でした。
来年は女流義太夫は国立演芸場での公演予定はないので、建替え前最後の演芸場の舞台でした。名残惜しい。夏なので背景はすだれで、ホリが青くて、風鈴の飾りなどあって涼しげ。
袖はめちゃ暑かったけどね!
名残惜しくて客席の写真なども撮ってみました。
新しい演芸場はどんな感じになるんだろうね。
スタッフさんも残っててほしいね。
再開場は令和11年予定。
…その時私、いくつだ…
N響「夏」2022(2022/7/15 NHKホール)

久しぶりにクラシック聴きに行った。それよりもNHKホールが久しぶりすぎました。

多分随分前の民俗芸能公演ぶりだと思う。
なんで行ったかといえば、
それは小曽根真さんのラフマニノフを聴きたかったから。
前も聴いてるけどね。
正直、前のほうが良かったなぁ。
尾高さんってきっとすごく真面目な方だから、JAZZっぽい感覚と合わないのではないかしら。
小曽根さんがいつになくきっちりクラシックしてて、ちょっとつまらなかった。
いや、きちんとクラシックも弾けるよという意味ではホントにさすがだとは思うのだけど。
ラフマニノフも小曽根さんには合ってるしね。
また色々聴きに行くし、オンラインライブも聴こうかなと思ってます。
チャイコフスキーの4番ってあんな曲でしたかね。覚えがない。初めて聴いたのかもしれない。なんだかやりたい放題って感じで、チャイコフスキーっぽくないですね。
小曽根さんは本当に素敵な方ですよね。いいわー。60歳。素敵だわー。
【演奏会】京之助の会 義経千本桜「すしやの段」(2022/7/10 両国回向院)

京之助の会。自分の会をやるのは初の試みでした。

三味線は津賀寿さん。そこは安心。

むしろ稽古で駒之助師匠よりビシバシ叱ってくれるだろうと思いました。

しかし、なんてったって「すしや」。CD1枚に入りきらない「すしや」。長い!

暑いし、エアコンガンガンいれても、換気で窓を開けたら熱風。

湿度も高いので、三味線もべたべたになる。

まぁいろいろな工夫と、いろいろな方の予期せぬありがたい設備のお影で、なんとかそれらしい舞台にできました。

仲間たちもみんな親切に丁寧に手伝ってくれて、女流義太夫の仲の良さというか、結束力の高さを再認識。

あの暑い中、お客様もたくさんいらしてくださり、本当にありがたかったです。

回向院さんにもたくさんわがまま言ってご迷惑かけまして、申し訳ございません。

回向院には竹本義太夫のお墓もあります。

犬猫供養塔もあり、三味線の撥の形をしています。

回向院は現在はペット供養のお寺としても有名ですが、この犬猫供養塔はもともとは三味線の皮が犬や猫だから建てられたものです。(だから三味線の撥の形になっている)

また、竹本綱太夫のお墓や、女流義太夫の方のお墓もあります。

義太夫関係者にとっては回向院はとても大事なところです。

そんなところで、きちんと会をやれて、本当に京之助はよかった。

ありがたいことだ。

【演奏会】伝承の力 古典の現在(いま)Ⅱ 藤本昭子の会(2022/7/3 国立劇場小劇場)

藤本昭子さんの、延期になっていた会がやっと開催されました。

曲目は下記の通り。
舞台も美しく、国立劇場だからできる舞台で、とても良かったです。
三弦と胡弓との合奏による「雪」は素晴らしかった。
しかし久しぶりにたくさん人の入った国立劇場を見ましたね。
しかも大劇場では歌舞伎鑑賞会で、渋谷のご連中さんがぞろぞろ出てきて、声かけられたりして、やたら知り合いに会いました。
しかし毎日暑いです。このまま9月になってもこんなだったら生きていられるか自信がない。
昭子さんCD(芸術祭大賞受賞CD)
「雪墨」
「地歌のいろは」
【舞踊】新 紀尾井素踊りの会 第三回 吾妻徳穂(2022/7/1 紀尾井小ホール)

 最近は日本舞踊の勉強もしなくちゃと思っていて、舞踊の会も行けるときには行くようにしています。

第三回は吾妻徳穂さんでした。演目は「島の千歳」と「静と知盛」。

間に渡辺保先生のお話が入ります。

渡辺先生のお話がとてもためになりました。たくさんメモを取ってしまいました。

「静と知盛」はもうちょっと広めに場所がほしかっただろうな。

コロナの関係で、地方(じかた)の並びをああするしかなかったのだろうけれど・・・。

しかし、黒の覆面マスクをしなくてよくなったのは見た目としてもいいですね。

あの黒の覆面マスク、やっぱり異様だったから。

紀尾井小ホールはまだまだ1列目を入れられないけれど(入れるなら舞台はうんと奥)。

【読書】帰れない村 福島県浪江町「DASH村の10年」 三浦英之(集英社)
これはツライ話でした。
でも今こそ読んでおくべきなのではないでしょうか。
いや、今こそというのはおかしいかもしれない。
ずっと読みつがれていいのではないでしょうか。
私は都会に馴染めない、でもド田舎のプライバシーも何もない感じは耐えられないという、中途半端な人間。
でも都会よりは田舎のほうがいい。人らしい生活ができるような気がするし、体にもいい気がするし、何よりもストレスが少ない気がする。
なのに私の趣味も仕事も、都心にしかない。だから都心に出られるギリギリのところで生活している。
都心生まれの人は「ふるさと」という感覚はあるのだろうか。
私は一番長く住んでいた場所を「ふるさと」とは思わない。愛着もない。小中の頃の友達はほとんど出ていってていないし、今住んでいるところが、私の人生の中で一番充実していた高校時代の場所なので、ここに住みたかったから住んでる。
福島県浪江町の方たちはみんな「ふるさと」と思っていたのではないかなぁ。
そこにもう帰れないと言われるのはどんな気持ちだろうか。
想像もつかない。
私の上司も結局生まれ故郷に帰ってしまったけど(仕事のときは出てくる)、そういうもんじゃないかな。
私には何もないな。
でも宮城県人の血が流れてるから、東北への思いは強い。
日本人は「ふるさと」をもたなくなってだめになったのではないかな。
ふるさとに限らないか、日本人としてのアイデンティティがなくなっている気がする。
しかしこの本のタイトルの付け方は明らかに狙っているとしか思えず、ちょっとどうかと思った。きちんとした取材なのでこういう媚びたタイトルはよくないと思う。なんとなく出版社の提案なのではという気もするが。
帰れない村 福島県浪江町「DASH村の10年」

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